第十四回 1987年11月 東海大学所蔵 桃園文庫展 −物語文学を中心として−

 

展示にあたって


  池田亀鑑博士が苦心蒐集した「桃園文庫」は博士の没後、一括して昭和四十八年東海大
 学附属図書館の所蔵となった。
  池田博士(一八九六−一九五六)は、東京高等師範学校を経て東京帝国大学文学部国文
 科を卒業し、東京大学の教授となった。平安文学を専攻、特に源氏物語の研究を中心に生
 涯をささげ、文献批判的研究という新たな学問的方法を樹立した。
  博士の業績を追いながら「桃園文庫」の内容に触れてみる。博士の最初の著作は『宮廷
 女流日記文学』であったが、これに関連した蒐集は五十点近い紫式部日記を筆頭に、中世
 にわたる日記文学が一群をなし、その周辺に私歌集群がある。文献批判的研究の出発点と
 なる『伊勢物語に就きての研究』では、伊勢物語の本文・古注等の蒐集が二百点を越えて
 いる。『古典の批判的処置に関する研究』は、その文献的方法を理論化する中で、土佐日
 記の貫之自筆本を復元した。そのために二百点近い土佐日記に関連する蒐集がある。その
 後『校異源氏物語』『源氏物語大成』の完成に至るが、そのため蒐集された源氏物語関係
 の文献は、鎌倉時代の古写本をはじめ一千点近い大量のものである。なお中古・中世の物
 語類も丹念に蒐集されている。これら以外の「桃園文庫」の蒐集では、古今和歌集・枕草
 子・徒然草などが注目される。
  博士は、このような膨大な文献資料を駆使して、文献批判的研究の実践・大成に邁進し、
 日本文学研究に輝かしい一時代を築いている。「桃園文庫」はその精進の跡を如実に物語
 っている。
  今回は『桃園文庫目録』上巻に収められた物語文学千五百九十一点の中から七十点を選
 んで展示した。

 

1. 竹取物語

 

江戸初期写 一冊  
袋綴 紙表紙 二三・一×一七・五糎(センチメートル) 

平安時代初期に成立した竹取物語の現存する写本中、天正二十年 <一五九二> の奥書を有するのが最古
のものである。展示資料は貢ごとに色変りする紙に、最古本と目される写年に比較的近い江戸時代初期
に写されたものである。
 

2. たけとり物語

 

正保三年刊 二巻二冊
袋綴 紙表紙 二三・八×一六・七糎

整版本(木版)は正保三年<一六四六>の刊行が最初であり、以後重版された。展示資料は正保三年刊
本と、それに絵を加えた元禄五年<一ハ九二>刊本である。(展示資料 三)
 

3. たけとり物語  

 

元禄五年刊 二巻二冊
袋綴 紙表紙 二六・三×一七・九糎 絵入本

4. 竹取物語抄

 

天明四年刊 二巻ニ冊
小山儀著 袋綴 紙表紙 二六・九×一八・七糎

国学者・儒学者である、小山儀(天明四年<一七七四>没)による天明四年<一七八四>四月に刊行さ
れた竹取物語の注釈書。展示資料は、国学者清水浜臣(文政七年<一八二四>没)の旧蔵本で、浜臣自
身による書入がある。
 

 5. 竹取物語伊佐左米言

 

寛政頃刊 二巻一冊
狛毛品成(こま・もろなり)著 袋綴 紙表紙 二五・六×一七・九糎 絵入本

国学者、狛毛品成(享和二年<一八〇二>没)による寛政五年<一七九三>に成立した竹取物語の注釈
書である。展示資料は毛品成の原本から直接、「竹取物語」茨城多左衛門版の版本に「伊佐左米言(いさ
さめごと)」の本文を、寛政七年に写した本(同志社大学蔵)をさらに写したものである。
 

6. 竹取物語俚言解

 

安政頃刊 二巻二冊
佐佐木弘綱著 袋綴 紙表紙 二五・六×一八糎

国学者、佐佐木弘網(明治ニ十四年没)による、安政四年<一八五八>に成立した竹取物語の注釈書で
ある。
 

7. 伊勢物語

 

室町中期写 一冊
胡蝶装 鳳凰織文紺地表紙 ニ〇・八×一五・ハ糎

作者・成立時期未詳の伊勢物語には種々の系統本がある。展示資料は、藤原定家(仁治二年<一二四一>
没)が書写した本の系統で、永正五年 <一五〇八> 頃写されたものと思われる。
 

8. 伊勢物語

 

江戸末期刊 一冊
袋綴 紙表紙 二六・四×一七・九糎 群書類従本

塙保己一の編纂による「群書類従」(五三〇巻六六五冊、目録一巻)は天明六年<一七八六>から刊行に
かかり文政二年<一八一九>に完了した。展示資料は、その内の三百七巻である。
 

9. 伊勢物語随脳

 

室町末期写 一冊
伝在原滋春著 大和綴 丹色紙表紙 二五・六×一七・二糎

業平の二男佐原滋春による、南北朝時代から室町時代初期に成立した伊勢物語の注釈書である。
 

10. 伊勢物語愚見抄

 

室町中期写 二巻一冊
一条兼良著 袋綴 紙表紙 二七・四×二一・四糎

歌人・連歌作者・和学者・故実家である、一条兼良(文明一三年<一四八一>没)による伊勢物語の注
釈書である。長禄四年<一四六〇>に初稿が成立。展示資料は、文明六年 <一四七四> に桃華堂文庫が
応仁の乱で稿本が焼かれた後、訂正増訂されたものの写しである。
 

11. 伊勢物語聞書

  江戸初期写 一冊
牡丹花肖柏(ぼたんか・しょうはく)著 袋綴 縹色紙表紙 二七・六×一九・一糎
連歌作者、肖柏(大永七年<一五二七>没)による、伊勢物語の注釈書である。文明九年 <一四七七>
に初稿本が成立するが、この聞書は、初稿本から三訂本まで成長した本である。展示資料は、初稿本
<文明九年本>の江戸時代初期に写されたものである。
 

12. 伊語当流秘抄直解

 

江戸初期写 一冊
三条西実隆著 袋綴 紙表紙 三〇・八×二三・七糎

和学者、三条西実隆(天文六年<一五三七>没)による、伊勢物語の注釈書である。大永二年 <一五ニ
二>に成立。展示資料は、最善本と目されている宮内庁書陵部本と同じ奥書をもつ、江戸時代初期に写
されたものである。
 

13. 伊勢物語註解

 

江戸初期写 一冊
里村紹巴著 袋綴 丹色紙表紙 一六・四×二二・七糎

14. 伊勢物語闕疑抄

 

江戸初期写 一冊                 
細川幽斎著 胡蝶装 紺地に金泥秋草文様紙表紙 二二・七×一六・二糎

和学者、細川幽斎(慶長一五年 <一六一〇> 没)による、伊勢物語の注釈書である。文禄五年<一五九
六>に成立。展示資料の奥書により、この抄の成立事情・書名の由来・成立時期などを知ることができ
る。
 

15. 伊勢物拾穂抄

 

延宝八年刊 五巻五冊
北村季吟著  袋綴 紙表紙 二七・一×一九・二糎

俳人・歌人・和学者である北村季吟(宝永二年<一七〇五>没)による、伊勢物語の注釈書である。寛
文三年<一六六三>以前に成立。この資料は刊記によって「延宝八年庚申秋吉辰長尾平兵衛開版」とす
る(イ)本系統、「延宝八年庚申仲秋吉辰藤野九郎兵衛梓」とする(ロ)本系統、およぴ無刊記の(ハ)本
系統の三種にわけられる。展示資料は(イ)本系統五冊本である。
 

16. 勢語憶断

 

江戸末期写 四巻四冊
契沖著   袋綴 紙表紙 二七・二×一九・ニ糎

僧侶で国学者である契沖(元禄一四年<一七〇一>没)による、伊勢物語の注釈書である。元禄五年頃
成立したが、享和二年<一八〇二>春にはじめて刊行された。展示資料は墨・朱筆の書入がある。
 

17. よしやあしや

 

寛政五年刊 一冊
上田秋成著 袋綴 紙表紙 二七×一八・四糎

国学者・歌人・読本作家である上田秋成(文化六年 <一八〇九> 没)による、伊勢物語の注釈書である。
寛政五年<一七九三>に刊行された。書名の由来は、序文によると疑問点の説はよしやあしやの意であ
ることがうかがえる。
 

18. 伊勢物語絵巻

 

江戸初期模写 一軸
巻子本  紙表紙  三三・五×一三米九糎

鎌倉時代後期に成立したこの絵巻の詞書は、伊勢物語本文の研究に重要な資料である。展示資料は、江
戸時代初期の模写で彩色がない。
 

19. 大和物語

 

江戸初期写 二巻一冊
袋綴 紙表紙 二五・四×一七・七糎

天暦五年<九五一>頃成立し、後増補されて現形となった。代表的な古写本は、弘長元年<一二六一>
に藤原為家が書写した本がある。展示資料は慶長<一五九六−一六一五)頃の古活字本の写しと思われ
る。
 

20. 大和物語

 

寛永十六年刊 二巻二冊
袋綴 紙表紙 二七・五×一七・八糎 古活字本

寛永十六年<一六三九>に木活字で印刷されたものである。
 

21. 大和物語抄

 

承応二年刊 六巻六冊
北村季吟著 袋綴 紙表紙 二六・二×一八・五糎

承応元年<一六五二>に成立、翌二年夏に刊行された大和物語の諸本・作者・成立年代・題号などにつ
いて述べた注釈書である。
 

22. 大和物語

 

明暦三年刊 二巻五冊
和田以悦(わだ・もちよし)著 袋綴 紙表紙 二三・三×一五・二糎 絵入本

歌人、和田以悦(延宝<一六七三〜八一>頃没)による、明暦三年<一六五七>に刊行された注釈書で
ある。別名「大和物語首書」ともいい、絵入本である。
 

23. 字津保物語

 

江戸中期写 一六巻二〇冊
袋綴 紙表紙 二七×一九・四糎

天禄−長徳 <九七〇〜九九九> 頃成立したと思われる。中世末期までさかのぼると思われる十分信頼で
きる古写本は、一、二本現存するのみである。近世初期には宮中にさえもこの物語の完本は求めがたい
状態であったらしい。展示資料は桐箱(漆塗)に入っており、おそらく嫁入本として嫁家に持参したも
のであろう。
 

24. 空物語玉琴

 

文化一二年頃刊 二巻一冊
細井貞雄著 袋綴 紙表紙 二六・一×一七・八糎

国学者、細井貞雄(文政六年<一八二三>没)による、うつぼ物語の研究書である。文化十二年<一八
一五>に成立したこの資料は、うつぼ物語の文学性を論じているうえで、後世に多大な影響を与えた。
 

25. 字津保物語考証

江戸末期写 四巻四冊
清水浜臣著 袋綴 紙表紙 二六・六×一八・七糎
 

26. おちくぼ

 

江戸中期写 三巻三冊
袋綴 紙表紙 二七・八×一八糎

作者・成立年未詳(一〇〇〇年前後か)であるこの物語の版本は、寛政六年刊本と同十一年刊本の二種
類ある。又写本は近世の書写が多く、奥書のない本が多いために写年次が不明である。展示資料は江戸
時代中期の写本と、寛政十一年 <一七九九> の刊本(展示番号 二七)である。刊本には、宝暦十一年
<一七六一>に、諸本と校合した書入がある。
 

27. 落くほ物かたり

 

寛政十一年刊 四巻四冊
袋綴 紙表紙 二五・七×一八・三糎

28. おちくほ物語註釈

 

寛政頃刊  二巻二冊
村田春海 橘千蔭共著 袋綴 紙表紙 二五・六×一八・一糎

29. 源氏物語

室町末期写 五四巻二九冊
紫式部著 袋綴 紙表紙 二二・七×一五・九糎

30. 源氏物語

 

室町末期写 五四巻二三冊
紫式部著 袋綴 紙表紙 二六・九×二〇糎

31. 源氏物語

 

承応三年刊 六〇巻六〇冊
紫式部著 袋綴 紙表紙 二六・七×一八・六糎 絵入本

32. 源氏物語奥入

 

江戸初期写 一冊
藤原定家著 袋綴 紙表紙 二八×一八・七糎

歌人、藤原定家(仁治二年 <一二四一> 没)による源氏物語の注釈書である。この奥入は、定家自筆本
(国宝)系統本、「源氏物語」各巻に記された系統本、それらが混在しているものの系統本にわけられる。
展示資料は、混在している系統本で江戸時代初期に写されたものである。
 

33. 河海抄

 

江戸初期写 二〇巻一〇冊
四辻善成(よつじ・よしなり)著 袋綴 紙表紙 二六・二×二〇・四糎

和学者、四辻善成(応永九年<一四〇二>没)による、源氏物語の注釈書である。貞治(一三六二−六
八>の初め、二代将軍足利義詮(あしかが・よしあきら)の命によりこの抄を撰した。池田亀鑑博士は、
中書本(義詮に撰進の時の稿本)と覆勘本(稿本に手を加えたもの)の二系統にわけられた。展示資料
は中書本であり、今後諸伝本の校合が進めば、両系統の姿を明らかにすることができようか。又この抄
は、初期の研究を批判的に総合した源氏物語注釈上画期的な大著である。
 

34. 源氏和秘抄

 

江戸初期写 一冊
一条兼良著 袋綴 布表紙 二三×一七糎

歌人・連歌作者・和学者・故実家である一条兼良による、宝徳元年 <一四四九> に成立した注釈書であ
る。各巻の中から語句約九百を抜いて、簡単な語意を注釈した。この抄は文意文脈を解釈する学風へ向
う、先駆的な意味を持っている。「花鳥余情」の生れる前のものとして注目に値する。
 

35. 花鳥余情

 

江戸中期写 三十巻十二冊
一条兼良著 袋綴 紙表紙 二七・二×一九・三糎

文明四年 <一四七二> に成立した源氏物語の注釈書。草稿を清書した初度本、初度本に修正を加えた再
度本の二系統がある。展示資料は再度本である。注釈の特徴として、従来の諸注とは異なり、語句のみ
をとりあげず、長く文を引いて説明する点があげられる。
 

36. 雨夜談抄

 

江戸中期写 一冊
宗祗著 袋綴 二八・四×二一・四糎

連歌作者・古典学者である宗祗(文亀二年<一五〇二>没)による、「源氏物語帚木巻」の注釈書であ
る。文明十七年<一四八五>に成立したこの抄は、雨夜の品定めの女性論を、後の物語中に登場する女
性にあてはめている。「花鳥余情」の注釈態度をさらに進展させたものである。
 

37. 孟津抄

 

室町末期写 一冊
九条稙通(くじょう・たねみち)著 紙表紙 二六・五×二〇・二糎

歌人・和学者である九条稙通(文禄三年<一五九四>没)による、天正三年 <一五七五> に成立した源
氏物語の注釈書である。池田亀鑑博士によると、「孟津抄」は草稿本系(天理図書館蔵 桃園文庫蔵)
と清書本の系統にわけられるとしている。
 

38. 岷江入楚

江戸中期写 五十五巻五十五冊
中院通勝(なかのいん・みちかつ)著 袋綴 紙表紙 三二・三×二二・八糎

和学者、中院通勝(慶長十五年<一六一〇亜>没)による源氏物語の注釈書である。これは慶長三年に成
立、諸注集成としては最もすぐれたものであって、注釈史上特筆すべきものである。従来の諸注にもれ
た語句をとりあげ、著者自身の解釈を加えている。岷江入楚はよほど流行したらしく、現存伝本は非常
に多い。
 

39. 湖月抄

 

延宝頃刊 六十巻六十冊
北村季吟著 袋綴 紙表紙 二六・五×一九・三糎

延宝元年 <一六七三> に成立したが、刊行は成立よりおくれ延宝三年頃であろう。展示資料も「書林
林和泉 村上勘兵衛 吉田四郎左衛門 村上勘左衛門」の刊記があり、延宝三年頃の刊行と思われる。
「湖月抄」は季吟自身の注解はひかえめで、旧注の集約的内容が濃い。これによって旧注の大体を知る
ことができる。
 

40. 源氏小鏡

 

室町末期写 二巻一冊
袋綴 紙表紙 二三×一六・八糎

作者・成立年不詳。源氏物語のあらましを述べた書、注釈書としても貴重である。異本が非常に多く、
書名もまた種々の形をもったものが多い。展示資料は永禄八年<一五六五>の奥書をもつ古写本である。
 

41. 源氏小かゝみ

 

文政六年刊 三巻三冊
袋綴 紙表紙 一五・七×一一・一糎 絵入本

源氏小かがみの版本は、慶安四年刊本、明暦三年刊絵入本、寛文六年刊本、文政六年刊絵入本などがあ
る。展示資料は、文政六年 <一八二三> 刊の絵入本である。
 

42. 源氏大鏡

 

江戸初期写 一冊
袋綴 紙表紙 二七・八×一九・八糎

室町時代初期に成立した、源氏物語のあらましを述べた書・注釈書である。京都大学、静嘉堂文庫、祐
徳文庫、東京大学、神宮文庫、国学院大学などが主な古写本を所蔵している。
 

43. 玉栄集

 

江戸初期写 一冊
花屋玉栄著 胡蝶装 紙表紙 二五・一×一三糎

慶長七年<一六〇二>、花屋玉栄による「源氏物語」の大意を最初に述べ、人物評、巻名の説明、主要な
歌の評論、語句の解釈などを加えた概説書である。伝本が少なく東海大学所蔵桃国文庫に三部所蔵して
いる。
 

44. 源氏物語諸巻年立

 

江戸初期写 一冊
一条兼良著 胡蝶装 紙表紙 二四・一×一八・五糎

享徳二年<一四五三>に成立した年立は、光源氏・薫の年令を追って整理し「源氏物語」理解のために、
年表のようにまとめたものである。展示資料や永世七年<一五一〇>冬良の奥書にも「源氏物語年立一
冊者……」とあるから、最初からこの書名であったことを知ることができる。
 

45. 源氏物語系図

 

鎌倉初期写 一軸
巻子本 紙表紙 二八・六×六米八二糎 九条家旧蔵本

「源氏物語」理解のために作中人物を系図化したものである。系図の整理形態に即して諸本を三期に分
類すると、三条西実隆以前の古系図、実隆が長享二年 <一四八八> に整理した系図、北村久備「すみれ
草」以後のものの三つに分けられる。展示資料は、古系図であり現存する最古の九条家旧蔵本の系図で
ある。
 

46. 源氏巻人数

 

室町末期写 一冊
三条西実隆著 袋綴 紙表紙 二二・八×一五・六糎

実隆が長享二年に整理した系図に載せられた人物を列挙したものであり、室町時代末期に写されたもの
である。
 

47. 源氏百人一首

 

天保十二年刊 一冊
黒沢翁満(くろさわ・おきなまろ)著 袋綴 紙表紙 二五・六×一七・八糎 絵入本

歌人、黒沢翁満(安政六年<一八五九>没)による、源氏物語桐壺帝以下の歌を百人一首ふうに集めた
注釈書である。
 

48. 仙源抄

 

室町末期写 一冊
長慶天皇著 吉田兼右書 袋綴 紙表紙 二六・六×二〇・八糎

弘和元年<一三八一>長慶天皇によって選述された。「源氏物語」の語彙を注し、いろは順に分類した
辞書である。応永三年<一三九六>の奥書のあるもの、耕雲の奥書と和歌を有するものなどの諸本があ
る。展示資料は応永三年の奥書を有するもので、池田亀鑑博士は「最も貴重すべき伝本」としている。
 

49. 源語秘訣

 

江戸初期写 一冊
一条兼良著 胡蝶装 紙表紙二五・二×一七・八糎

文明九年<一四七七>に成立した、「源氏物語」の故実に関する難解な所を解釈したものである。著者
自筆本は現有しないが、展示資料奥書から成立の事情、書写の経緯などの事情を知ることができる。
 

50. 源氏外伝

 

寛政二年写 二巻二冊
熊沢蕃山著 袋綴 紙表紙 二六・四×一八・七糎

儒者、熊沢蕃山(元禄四年<一六九一>没)による、「源氏物語」の評論である。延宝五年<一六七七>
頃成立した源氏外伝は、儒教的立場から解説している。展示資料は、寛政二年<一七九〇>に写された
ものである。尚、この資料は元信州高島藩士で、明治四三年宮内大臣となった、渡辺千秋伯爵の旧蔵
本である。
 

51. 紫家七論

 

元禄十六年頃刊 一冊
安藤為章著 袋綴 紙表紙 二八・三×一九・四糎

徳川光圀に任えた国学者、安藤為章(享保元年<一七一六>没)による源氏物語の評論である。元禄十
六年<一七〇三>に成立した紫家七論は、儒教的な臭味が残っており、源氏外伝と通ずるものがある。
 

52. 源氏供養表白

 

江戸初期写 一冊
安居院聖覚(あごいん・しょうかく)著 胡蝶装 紙表紙 二四・八×一八・三糎

鎌倉時代の説法師である聖覚(建仁三年 <一二〇三> 没)による、源氏物語を書いて地獄におちたとさ
れる、紫式部を救うための供養文である。成立年は未詳ではあるが、鎌倉時代には成立していたと思わ
れる。
 

53. 源氏物語絵巻

 

江戸末期模写 一軸
巻子本 布表紙 二二・一×一二米七七糎 詞書・彩色なし

54. 源氏絵

 

江戸末期写 一帖
折本 布表紙 三一・七×二四・五糎

55. 源氏香の図

 

江戸末期刊 一帖
歌川農国(二世)画 折本 三五・三×三四・三糎

江戸時代末期の浮世絵師豊国(二世)による、源氏香の聞きあたりを示す図を付した、源氏物語各巻の
人物絵。
 

56. さころも

 

承応三年写 四冊
袋綴 紙表紙 二七・二×一九・二糎

成立年不詳。鎌倉時代の写本数点をはじめ、その伝本数はきわめて多い。展示資料は、承応三年<一六
五四>に書写されたものである。又、承応三年刊の板本およびその後刷本(展示番号 五七)などが現
存してい る。
 

57. 狭衣

 

寛政十一年刊 五巻五冊
袋綴 紙表紙 二二・三×一五・七糎 絵入本

58. 堤中納言

 

江戸初期写 十冊
袋綴 紙表紙 二七・三×一九・九痺

作者・成立年未詳(平安時代後期の成立か)。現存する写本は約六十種あり、数種に系統分類される。近
世以前にさかのぼる古写本は見つけ出されていない。
 

59. 堤中納言

 

寛永項写 二冊
袋綴 紙表紙 二七・一×二〇・一糎

展示資料は黒川真頼(明治三十九年投)の旧蔵書である。氏は明治二年、大学小助教、のち教授となる。
文学博士でもあり各分野に業積がある。
 

60. 無名草子

 

江戸末期刊 一冊
袋綴 紙表紙 二六・一×一八・一糎 群書類従本

作者は藤原俊成女説がかなり有力である。成立は建久九年 <一一九八> 以後建仁二年 <一二〇二> 説が
有力である。展示資料は「群書類従」三百十二巻である。
 

61. あまのかるも

 

江戸初期写 一冊
袋綴 紙表紙  二七・四×一九・八糎

作者未詳、成立年代は平安末期か。国立国会図書館、宮内庁書陵部、筑波大学等に所蔵しているが、い
ずれも同一系統の江戸時代の写本である。展示資料も江戸時代初期に写されたものである。
 

62. すみよし物語

 

寛永九年刊 二巻二冊
袋綴 紙表紙 二六・三×一八・四糎

作者未詳。平安時代の古本は、源氏物語以前の十世紀に成立したが、現存本は鎌倉時代に疑古物語とし
て改作されたとするのが通説である。伝本も異本も非常に多く、又奈良絵本(展示番号 六三)などの
伝本もある。
 

63. すみよし物語

 

江戸中期写 三巻三冊
胡蝶裳 紙表紙 二三・五×一七・一糎 奈良絵本

64. 日本国現報善悪霊異記

 

江戸末期写 三巻一冊
景戒(きょうかい)著 袋綴 紙表紙 二六・九×一九・二糎

「日本霊異記」ともいう。弘仁年間<八一〇〜二四>に成立したと推測される。現在五系統の写本が知
られているが、展示資料は三昧院本(建保二年<一二一四>)の奥書を有する系統の写本である。
 

65. 今昔物語集

 

江戸末期写 二十二冊
袋綴 紙表紙 二六×一八・四糎

一一二〇年代に成立か。現有する古写本は六十本を越えるが、ほとんど鈴鹿本(現有最古の写本)を祖
本としている。展示資料も同様であり、朱筆の書入があり校合・研究の跡がうかがえる。
 

66. 宇治拾遺物語

 

江戸初期写 五巻五冊
袋綴 紙表紙 二六・三×二〇糎

作者未詳、十三世紀前半の作と思われる。写本として宮内庁書陵部、陽明文庫、内閲文庫等十数部の写
本がある。版本としては寛永頃の古活字版と万治二年 <一六五九> の整版本がある。展示資料は、江戸
時代初期に写されたものと、万治二年刊本(展示番号 六七)である。
 

67. 宇治拾遺物語

 

万治二年刊 十五巻十五冊
袋綴 紙表紙 二二・七×十六糎 絵入本

68. 栄花物語

 

明暦二年刊 四十一巻二十一冊
袋綴 紙表紙 一五・七×一一・一糎

作者不詳。成立は正編三十巻と続編二十巻にわかれ、正編は長元年間 <一〇二八〜一〇三七> と推定さ
れ、続編は寛治六年 <一〇九二> 以後間もない頃であろう。諸本は古本系統、流布本系、異本系統にわ
けられる。展示資料は流布本系統の明暦二年 <一六五六> 刊本(目録・系図一冊を含む)である。
 

69. 将門記

 

寛政十一年刊 一冊
袋綴 紙表紙 二六・五×一八・五糎

作者未詳、天慶三年 <九四〇> からあまり時を距てない時期に成立したものと考えられる。古写本とし
ては、真福寺蔵本と楊守敬旧蔵片倉武雄蔵本の二種が知られている。展示資料は真福寺本を稲葉通邦が
模刻し刊行したものである。
 

70. 平家物語

 

明暦二年刊 十二巻六冊
袋綴 紙表紙 二五・七×一八・七糎 絵入本

 

 

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