第十六回 東海大学所蔵 桃園文庫展 −随筆、日記・紀行、詩歌を中心として−

 

展示にあたって

 
 源氏物語の研究者として著名な故池田亀鑑博士旧蔵本の桃園文庫目録中巻が本年(昭和63年)三月に刊行された。
 本目録には、物語文学以外の随筆、日記・紀行、詩歌など千四百三十五点が収録されている。
 今回は、昨年の桃園文庫展−物語文学を中心として−につづき、本目録中巻から六十九点を選んで展示した。

 

1. 清少納言枕そうし

 

清少納言著 寛文九年写 二巻一冊

 枕草子には、三種の系統の写本がある。本書は、これらとは異った系統の写本で、堺本と呼ばれている。
 奥書に「寛文九とせ卯月三日に書きおはりぬ 山井我足軒」とあり寛文九年に書写されたものである。
 

2. 春曙抄(しゅんしょしょう)

 

北村季吟(きたむらきぎん)著 寛政六年刊 十三巻十三冊

 江戸時代の俳人・歌人・国学者であり多くの注釈書を著した北村季吟による、枕草子の注釈書である。
 本書は江戸時代の歌人である石川依平(いしかわよりひら)自筆書入本で「依平蔵書」印があり、名家
 の蔵書として貴重な資料である。
 

3. 清少納言旁註(せいしょうなごんぼうちゅう)

 

岡西惟中(おかにしいちゅう)著 元和頃刊 十一巻十一冊

 江戸時代の俳人である岡西惟中による枕草子の注釈書である。「枕草子」本文に傍注を施し、くわしい
 考証などは、本文の後に項目をたてて説明している。加藤磐斎の「清少納言枕草子抄」の影響が強い。
 

4. 方丈記

 

鴨長明著 江戸初期写 一冊

 建暦二年(一二一二)成立。いわゆる隠者文学の最高峰の一つで、分量的には四百字詰原稿用紙二十枚
 程度の小品ながら、「徒然草」と共に中世随筆の双璧とされる。広本系と略本系に大別され、略本系は
 広本系の三分の一程の分量しかなく、通説では後世の偽作とされているが、広本の草稿本ではないかと
 の見方もある。
 

5. 方丈記

 

鴨長明著 正保四年刊 一冊


 

6. 長明方丈記抄

 

加藤磐斎(かとうばんさい)著 延宝二年刊 三巻三冊

 江戸時代の国学者加藤磐斎が、「方丈記」の本質を把握しようと意図し、強烈な注釈意識のもとに著し
 たもの。文章全体を見通す立場から、一々の語句の位置づけや働きに注目し、文章批判に及んでいる点
 がすぐれている。しかし、「方丈記」の構成や目的をすべて仏教的なものに集約し、注釈の基盤をここ
 に置いたため、解釈が観念的になっているのが欠点である。
 

7. 鴨長明方丈記流水抄

 

槙島昭武著 亨保四年刊 二巻二冊

 江戸時代の国学者 槙島昭武が宝永三年(一七〇六)に執筆した。近世に刊行された「方丈記」注釈書
 の最後のもので、諸注の集成的位置に立つ、全般的に辞書的解釈にとどまる点が多いが、作品をそのま
 まの姿において受け止め、素直に読み解こうとした態度はすぐれたものである。
 

8. つれつれ草

 

卜部兼好著 慶長二年写 二巻二冊

 本書は慶長二年に書写され、さらに天保五年に墨で校合書入をしたものである。
 

9. つれつれくさ

 

卜部兼好著 刊本 二巻二冊

 本書は刊年が不明であるが、江戸初期の古版本の類である。
 

 

10. 大字絵入 つれつれ草

 

卜部兼好著 寛文十年刊 二巻二冊

 本書は絵入本であり、句読点、読仮名をつけている。章段数は章段ごとに改行しておりその行頭の欄外
 に記入してある。
 

11. 改正頭書 つれつれ草絵抄

 

卜部兼好著 艸田斎寸木子画 元禄四年刊 二巻二冊

 本書は絵入本であり、句読点、濁点、読仮名をつけ、章段ごとに改行し、行頭に枠付で小さく段数を記
 入している。
 

12. つれつれ草抄

 

秦宗巴(はたそうは)箸 慶長頃写 二巻二冊

 安土桃山時代の医学者、秦宗巴が著した徒然草の最初の注釈書である。本書は、安土桃山時代の和学者
 で、也足軒(やそくけん)と号した、中院通勝(なかのいんみちかつ)が、書写したもので、他の古写
 本である前田家本、伊達家本と並び、徒然草抄研究のための貴重なものである。
 

13. 野槌(のづち)

 

林羅山著 慶安年間刊 十四巻十三冊

 江戸時代の儒学者である林羅山による徒然草の注釈書である。初刻本は十巻十冊で「埜槌」の題がある。
 本書は再刻本で、巻頭で作者の兼好を紹介し、本文を二四六段に区分している。各段の注釈は、語句・
 人物・故事・有職について広く和漢の書・仏典によって傍証している。中国の経史詩文を引いて、趣意・
 情趣を理解させ、問題とする文段では、儒教的合理主義の立場から論評を加えている。
 

14. 徒然草抄

 

青木宗胡(あおきそうこ)著 刊本 四巻四冊

 本書は、「徒然草」の本文のところどころを下げて書き、注釈を頭注形式で記している。宗胡の注は、
 「野槌」の林羅山の注を主としたものである。江戸時代の「徒然草」注釈書の中で版を重ねる事が最も
 多く、信頼すべき便利なテキストとして普及した。
 

15. 金槌(きんつい)

 

西道智(にしどうち)著 万治元年刊 十二巻十二冊

 江戸時代の国学者である西道智による徒然草の注釈書である。注釈は「野槌」の注釈を主としてとり入
 れ、寿命院抄も照合し、自説を時々付け加えている。
 

16. 徒然草抄

 

加藤磐斎著 寛文元年刊 十三巻六冊

 江戸時代の国学者である加藤磐斎による徒然草の注釈書である。本書は、「寿命院抄」「野槌」の説を
 とりあげているが、従来の説にこだわらず独創的なものを出そうとしている。仏典の引用が多いのが特
 色で、天台三大部をはじめ、天台宗の経論を主としている。仏教教理による注釈書として注目される。
 

17. 徒然草文段抄

 

北村季吟著 寛文七年刊 七巻七冊

 北村季吟による徒然草の注釈書である。本書は、「寿命院抄」「野槌」「慰草」「磐斎抄」に自説を加
 え、季吟の他の古典的注釈書と同様に、周到で穏健妥当と評せられる注釈である。古語を注するに「源
 氏物語」の古抄を引くなど、出典・故事・有職の考証も精細であり、儒家・仏家の注釈に対する専門歌
 学者・古典学者の本格的注釈書として重視される。
 

18. 徒然草参考

 

邦高親王(くにたかしんのう)著 延宝六年刊 八巻八冊   

 伏見宮貞常親王の第一皇子、邦高親王(法名は恵空)による徒然草の注釈書である。内容は仏教的教誡   
 観点からの注釈書。本書は、寿命院抄から大全までの諸注釈書を整理した上、詳細な考察を加えたもの
 で天台宗の仏学をひくことの多い点で類書申出色のものとされている。
 

19. 徒然草直解(つれづれぐさちょっかい)

 

岡西惟中著 貞亨三年刊 十巻五冊

 江戸時代の俳人である岡西惟中による「三教一致説」に基く注釈書である。徒然草に出ている人物一九
 八名の系図、器物の図を掲げているのが特徴である。中院通勝の説に依拠するところが多い。
 

20. 徒然草諸抄大成

 

浅香久敬(あさかきゅうけい)編 貞享五年刊 二十巻十冊

 江戸時代の国学者、神道家である浅香久敬による徒然草の注釈書である。本書は、「寿命院抄」にか十
 二の諸注釈書を引用し、編者自身の考を加え、従来の諸説の良否に関係なく、一覧できるように集大成
 したもので徒然草注釈書中最大のものである。徒然草注釈辞典とも称すべき大著とされている。
 

21. 土左日記

 

紀貫之著 延享項写 一冊

 本書は、「青谿書屋本」と呼ばれるもので、池田亀鑑博士がその学問的価値の高さを、考証された本で
 ある。その祖本である「為家自筆本」は「貫之自筆本」を極めて忠実に書写した本として、正確度は定
 家本に勝り、純学術的価値も一段高いとも言われているものである。本書もまた、それを忠実な書写態
 度が見とめられ、「為家自筆本」と同等の価値におかれている。なお、「青谿書屋本」は、冷泉為村が
 桜町天皇の命を受けて、書写し、献上したものの、又写しであろうと言われている。
 

22. 土佐日記

 

紀貫之著 寛永二十年刊 一冊

 

23. 土佐日記見聞抄(とさにっきけんぶんしょう)

 

加藤磐斎著 寛文十二年写 一冊

 江戸時代の国学者、特に歌学に関する著作が多い加藤磐斎による、土佐日記の注釈書である。奥書によ
 ると正保五年、「洛花咲翁」すなわち松永貞徳から土佐日記について学んだことを明暦元年に清書、注
 釈書としてまとめたものである。文意や作意にかかわる注に特色がある。本書は、天王寺の秋野本順が
 寛文十二年に書写したものである。
 

24. 土佐日記附註

 

人見卜幽(ひとみぼくゆう)著 万治四年刊 三巻三冊

 江戸時代の儒学者である人見卜幽による土佐日記の注釈書である。本書は特に漢籍の引用が多く、また
 漢語の注が目立つ。北村季吟「土佐日記抄」と並ぶ、近世初期の重要な注釈書である。
 

25. 土佐日記抄

 

北村季吟著 宝暦十三年刊 二巻二冊

 北村季吟による土佐日記の注釈書である。本書は、真潮自筆本の転写本である(真潮自筆本とは、季吟
 の抄に藤原宇萬が加茂真淵の説をとりいれて加筆したものである)。真潮自筆本を転写した人物は、正植
 といい土佐の国の人らしいが、詳細は不明である。
 

26. 土佐日記抄

 

北村季吟著 寛政四年刊 二巻二冊

 本書は、本居宣長が、校合した本を転写したものである。宣長は、寛政四年正月貫之自筆と奥書がされ
 ているものを写し、それに校合を朱筆で加えた。本書は、彦根藩士で、宣長の門下である、国学者近麿
 という人物が、伊勢松坂の宣長を訪ねて写したものである。本書によって、宣長の校合を知ることがで
 き、テキストとしても価値の高いものである。
 

27. 土佐日記考証

 

岸本由豆流(きしもとゆずる)著 文政頃刊 二巻二冊

 江戸時代の国学者である岸本由豆流による土佐日記の注釈書である。本書は『日記』の文を小節に区切
 って掲げ、左右に校合を記し、そのあとに注釈を付してある。更に頭注の欄を設け、注釈に取り上げた
 語句について用例、故事等を広く和漢古今の典籍から豊富に引用している。
 

28. 校異首書土佐日記

 

加藤磯足(かとういそたり)著 文政元年刊 一冊

 田中道麿、本居宣長について和歌を学び、最も歌学に精通した江戸時代の歌人、加藤磯足による土佐日
 記の注釈書である。土佐日記の文字、語句の異同を比べ合わせたものである。蔵書印から土佐藩士小谷
 正風の旧蔵本であることが知れる。
 

29. 校註土佐日記

 

加藤磯足著 慶応四年写 一冊

 土佐日記に校訂・注釈を加えた書。本書は、慶応四年、山本正雄氏によって書写されたものである。
 

30. 土佐日記燈(とさにっきともしび)

 

富士谷御杖(ふじたにみつえ)著 文化十四年刊 八巻八冊

 江戸時代の国学者、富士谷御杖による土佐日記の注釈書である。注釈にあたっては、「日記」 の小節
 を前に示し、次に「表」と「裏」に分けて解釈を加えている。「表」は語義と文意を説明し、「裏」は
 表現の奥にある作者の心情と意図を探っている。本書は、近世の「土佐日記」研究書中、代表的なもの  
 である。
 

31. 土佐日記舟の直路(とさにっきふねのただじ)

 

橘守部(たちばなもりべ)著 天保十三年刊 二巻二冊

 江戸時代の国学者である橘守部による土佐日記の注釈書である。本書は、一般読者に理解しやすいよう
 に「土佐日記」本文と注釈をうまく続くように、注釈の部分は片仮名を用い線で囲んでいる。注釈文は
 語釈、文意の他に故実、地理等についてもふれ、所々に俗語をまじえ、なだらかに読み下せるように工
 夫している。
 

32. 蜻蛉日記(かげろうにっき)

 

藤原道綱母著 写本 三巻一冊

 本書は最初の刊本である元禄十年版を、底本にして書写したものである。
 

33. 蜻蛉日記

 

藤原道綱母著 刊本 八巻八冊

 板本は元禄十年版のものが最初である。本書は宝暦六年の版であり、江戸時代の国学者契沖が校訂書入
 をしたものに、さらに書入れを加え書写したものである。
 

34. 蜻蛉日記

 

藤原道綱母著 刊本 五冊

 本書は、江戸時代の国学者、契沖自筆の書入本から、江戸時代の歌人である萩原宗固が書写したもので
 ある。蔵書印により蜂須賀家、屋代弘賢(やしろひろかた)の旧蔵本であったことが知れる。
 

35. 和泉式部物語

 

江戸中期写 一冊

 本書は、和泉式部が「飽かぎりし昔の事」として残した作品とされ、後の人によって日記、又は物語と
 呼ばれ、世につたえられた。写本には多く「和泉式部物語」とある。本書は蔵書印から江戸時代の国学
 者、清水浜臣の旧蔵であったことが知れる。
 

36. 和泉式部日記

 

江戸後期刊 一冊

 本書は群書類従に収録されている和泉式部日記である。本文はほとんど扶桑拾葉集本と同じであり、享
 禄奥書本と寛元本の混成本とされる。
 

37. 紫式部日記

 

紫式部著 江戸後期刊 二冊

 この版本は、江戸時代の国学者、屋代弘賢旧蔵本を底本として傍証本・扶桑拾葉集本をもって校訂した
 群書類従に収録されている本である。
 

38. 紫式部日記

 

紫式部著 江戸中期写 二冊

 現存する伝本は、「紫式部日記絵巻」の詞書や日記切などの断簡を除外すれば、すべて江戸時代初中期
 以後の写本である。これらのうち写本はすべて室町時代の伏見宮邦高親王(一四五六−一五三二)筆写
 本を祖とするもので、本書も貴重な伝本の一つである。
 

39. 紫式部日記絵巻

 

作者未詳 江戸後期刊 一冊

 この絵巻は江戸時代以降、詞書を藤原良経、絵を藤原信実と伝えられたが確証はない。「紫式部日記」
 のほぼ全文を詞書とし、詳細な絵画化を試みたもので、成立当初は五、六十段の詞と絵を、絵巻十巻ほ
 どに仕立ててあったものと想定される。本書は袋綴に製本された刊本で彩色もされていない。
 

40. 紫式部日記傍註

 

壺井義知(つぼいよしちか)著 享保十四年刊 二巻二冊

 江戸時代の故実家壺井義知による「紫式部日記」の最初の注釈書である。義知は本書の中で「紫式部日
 記」伝本十か所の脱文のうち八か所を補入、その後の諸注釈書に大きな影響を与えた。本書は「紫式部
 日記傍証」の初版本であり、蔵書印から壺井義知の旧蔵であったことが知れる。
 

41. 紫式部日記釈

 

清水宣昭(しみずのりあき)著 天保四年刊 四巻四冊

 江戸時代の国学者、清水宣昭による紫式部日記の注釈書である。壺井義知の「紫式部日記傍註」本、群
 書類従本、植松茂岳蔵本の三本を校合した校訂本で、俗語による詳細な語釈を示した。
 

42. さらしなの記

 

菅原孝標女著 江戸初期写 一冊

 康平二年(一〇五九)以降の成立。仮に康平三年とすれば作者五十三歳の時の成立。一三歳の秋、父の
 任国上総(現千葉県)から帰京した旅に筆を起こし、夫と死別した翌年五二歳の頃までの回想記。物語
 への憧れと夢の記事が多い。
 

43. さらしな日記

 

菅原孝標女著 江戸後期刊 一冊

  本書は群書類従に収録されている本である。
 

44. 讃岐典侍日記(さぬきのすけにっき)

 

藤原長子著 江戸末期写 二巻一冊

 この日記は元来上下二巻であったとする説、もと三巻あったものが脱落して二巻となったとする説があ
 る。現存する諸本は近世のもので、どちらとも決め難く、また脱落した巻も特定できないが、堀河院の
 葬送、中宮篤子の出家などを書いた中巻があったとみるのが有力なようである。本書は江戸時代の国学
 者、清水浜臣自筆の校合書入があり、蔵書印から浜臣の旧蔵であったことが知れる。
 

45. 讃岐典侍日記

 

藤原長子著 二巻一冊

 本書は群書類従に収録されている本で、この他に二十余種の伝本が知られている。
 

46. 鴨長明海道記

 

作者未詳 江戸後期写 一冊

 鴨長明作、源光行作の両説が古来より伝えられるが、長明は成立年とされる貞応二年(一二二三)より
 七年前に没しており、源光行とする説も内容記述に合致しないので一応不明とされている。現存する最
 古の写本は享徳三年(一四五四)の識語を持つ尊経閣文庫本で、「鎌倉紀行」の題がつけられている。
 

47. 鴨長明海道記

 

作者未詳 寛政六年刊 二巻二冊

 

48. 十六夜日記

 

阿仏著 江戸初期写 一冊

 十六夜日記の慶長以前の古写本は数少ない。本書は細川幽斉が兼好法師自筆本を書写し、他本と読合わ
 せたもので、十六夜日記伝本中最も重要なものゝ一つである。
 

49. いさよいの日記

 

阿仏著 万治二年刊 一冊

 本書は数多い十六夜日記の刊本のうち、万治年間に刊行されたものであり、特徴として挿絵を有してい
 る。又藤原俊成女と越部庄とに関する永仁六年(一二九入)三月一日の記と、阿仏の略伝とを付してい
 る。
 

50. 十六夜日記残月鈔

 

小山田与清・北条時鄰著 文政七年刊 三巻三冊

 十六夜日記の本文を諸本七本をもって校合し注釈をこゝろみたもの。具体的な用例の重視、本居宣長な
 どの他の所説の正確な引用などがあり、十六夜日記の本格的な注釈書である。注釈は詳細で、特に語源
 の考証と地名の説明に詳しい。著者の小山田与清(おやまだともきよ)は、江戸時代の国学者で故実家
 であり、和漢に通じ、特に考証にカを尽した。北条時鄰(ほうじょうときちか)は、国学者、小山田与
 清の弟子。国学和歌に関し、造詣が深い。
 

51. 古今和歌集

 

文政十一年写 一冊                              

 延喜五年(九〇五)醍醐天皇の下命で、紀友則、紀貫之、凡河内躬恒、壬生忠岑が撰者に任命され、編
 集し奏上された。平安前期の勅撰集としては最初のものである。歌数約一一〇〇首。歌風は万葉集の「ま
 すらをぶり」に対し「たはやめぶり」といわれ、知的で繊細な詠法に特色が認められる。
 

52. 古今和歌集秘抄(こきんわかしゅうひしょう)

 

一条兼良著 文明八年(一四七六)写 一冊

 室町中期の歌人、連歌作者、和学者、故実家である一条兼良による古今和歌集の注釈書であり、「古今
 集童蒙抄」「古今秘抄」「愚見抄」「古今集打聞」「古今集釈義」ともいう。本書は古今集童蒙抄の最
 古の写本で、流布本童蒙抄を正す善本といわれ、三条実隆の子公条(きんえだ、永禄六年没)によって
 書写されたものである。
 

53. 古今集抄

 

宗祗著 江戸初期写 一冊

 宗祗は室町後期の連歌師であり、古今集両度聞書を著わし、連歌師、古典学者としての地位を定めた。
 本書は宗祗の講義をもとに肖柏が聞書きをし、更に宗祗の正本と校合し書写した経過が兼載の識語に述
 べてある。
 

54. 三代集

 

享保八年写 六巻六冊

 古今和歌集、後撰和歌集、拾遺和歌集の三勅撰集を一括して三代集と呼んでいる。この三勅撰集は、古
 代、中世では、和歌の理想と考えられ、他の勅撰集にくらべて特に尊重された。
 

55. 僻案抄(へきあんしょう)

 

藤原定家著 江戸初期写 一冊

 治承年間(一一七七‐一一八一)定家が父の俊成から古今和歌集、後撰和歌集の講義を受けたが、これ
 をふまえて、古今和歌集(六十余項)、後撰和歌集(四十余項)に注説を加え、さらに自説により拾遺
 和歌集(十四首)に注説を加えた注釈書である。又、歌の解釈だけではなく、作者や伝本、歌壇事情な
 どについてもくわしい記述がある。
 

56. 後撰和歌集

 

文明九年写 一冊

 村上天皇の下命により撰集された第二番目の勅撰和歌集であるが、奏覧の記録のないこと、序文のない
 こと、古今和歌集にくらべて、編纂に統一整理のない点(重出歌、作者誤記のあること)などにより、
 完了したとも、未完了ともいわれている。本書は室町中期の歌人である岩山道賢によって書写されたも
 のである。
 

57. 拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)

 

天保九年写 二冊

 第三番目の勅撰和歌集である。撰者については、花山院とする説と藤原公任(きんとう)とする説があ
 る。この撰者問題とも関連して、この書の成立過程が曖昧であり今後に問題を多く残している。本書は、
 明治天皇に仕え、宮内大臣となった愛書家、渡辺千秋の旧蔵本である。
 

58. 新古今和歌集

 

江戸初期写 一冊(巻一〜巻十五 欠)

 後鳥羽院の下命による第八番目の勅撰和歌集である。妖艶な情調象徴と本歌取り・三句切れ・体言止め
 などの特色をもって新古今調といわれ、万葉調・古今調とともに歌詞の三典型といわれている。
 

59. 現存和歌六帖

 

藤原光俊撰 江戸中期写 一冊

 嘉禄元年(一二三二)頃藤原定家に師事した歌人である藤原光俊の私撰集である。本書は三条西家の旧
 蔵本であり、群書類従に収録されている本と比較すると相当異なり、大永七年禁裡御本を書写したもの
 でもあり貴重な資料である。
 

60. 夫木和歌抄(ふぼくわかしょう)

 

藤原長清撰 江戸初期写 三十六巻三十六冊

 鎌倉時代の歌人で、冷泉為相(れいぜいためとも)に学んだ藤原長清の私撰集である。本書は蔵書印か
 ら勝海舟の旧蔵本であることが知られ、古写本としても貴重な資料である。
 

61. 三十六人集

 

延宝頃写 三十七冊

 平安中期以前の代表的歌人の私家集を集成したもので、平安後期に成立したとされている。本書は江戸
 時代の歌人中院通茂(なかのいんみちしげ)が書写したものである。
 

62. 式子内親王集

 

式子内親王著 江戸中期写 一冊

 後白河天皇の第三皇女である式子内親王(正治三年<一二〇一>没)の私歌集である。本書は、屋代
 弘賢の喜入もあり、蔵書印から蜂須賀家、屋代弘賢の旧蔵であったことが知れる。
 

 

63. 隆信集

 

藤原隆信著 元文五年写 二巻二冊

 元久元年(一二〇四)の成立と考えられる。歌人である隆信の没前年の撰で、生涯の歌を集大成してい
 る自撰家集である。本書は加藤信成が書写したもので、郡書類従に収録されている本と比較すると、相
 異点があり、貴重な資料である。
 

 

64. 建礼門院右京大夫集(けんれいもんいんうきょうのだいふしゅう)

 

藤原伊行女(ふじわらこれゆきのむすめ)著 江戸初期写 一冊

 貞永元年(一二三ニ)頃成した自撰家集である。彼女は承安三年(一一七三)より平清盛の女中宮徳子
 (のちの建礼門院)に仕え、源平の動乱の中で戦死した平資盛と恋愛関係にあった。この資盛への追憶
 が、家集の主要部分となっている。歌風は詞書が長く流麗で、家集であるが女房日記に類する性格をも
 っている。
 

65. 兼好家集

 

卜部兼好著 元禄十年写 一冊

 兼好家集の伝本は、ほとんどが尊経閣文庫蔵の本を祖本としている。本書は、その転写の過程を知るこ
 とができる資料として、貴重なものである。
 

66. 東野州家集(とうやしゅうかしゅう)

 

東常縁(とうのつねより)著 寛文十一年写 一冊

 室町時代の歌人である東常縁の私家集であり、本書には「常縁集」の別称の書名がついている。春、夏、秋、
 冬、恋、雑の部立を設け合わせて、四〇二首を集めている。常縁の作でないものが五首程入っているが、
 その中には宗祗の作二首も含まれている。
 

 

67. 拾遺百番歌合

 

藤原定家撰 文化十五年写 一冊

 藤原定家が、藤原良経の命によって撰したものとみられる。「百番歌合」に続くもので、後百番歌合と
 も(合わせて物語二百番歌合という)いわれている。左方に「源氏物語」、右方に「夜の寝覚」、「御
 津浜松」、「みかはに咲ける」などの十種の物語の歌計百首を配した歌合、散佚物語を多く含み、平安
 時代の物語研究の貴重な資料となっている。
 本書は江戸時代の国学者、屋代弘賢が書写したものである。
 

68. 和漢朗詠集

 

藤原公任撰 江戸初期写 二巻二冊

 上巻は、春、夏、秋、冬の各部、下巻は雑部とする歌謡集である。各部には朗詠題を立て、漢家詩文、
 本朝詩文、和歌の順に作品を配列している。漢詩では白居易、菅原文時、道具、和歌では紀貫之、凡河
 内躬恒などの作品が多い。宮廷貴族の朗詠の流行を背景に後世の文学に大きな影響を与えた。本書は森
 鴎外著「渋江抽斎」で知られている江戸時代の儒学者。医学者である渋江抽斎(しぶえちゅうさい)の
 旧蔵本である。
 

69. 扶桑拾葉集(ふそうしゅうようしゅう)

 

徳川光圀編 江戸後期写 三十巻三十五冊

 光圀は若年の頃から和文叢書の編纂を志し、延宝六年(一六八七)十二月、一応形が整ったところで後
 西院から題号が下賜され、同八年四月、三十巻にまとめて、後西院に、同十二月霊元天皇に献上した。
 内容は平安時代から江戸時代初期に成立した文芸作品三一三点を収めている。
 

 

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