第二十七回 1998年5月 桃園文庫のなかの徒然草

 

展示にあたって


  「桃園文庫のなかの徒然草」は1997年1月に、紀伊國屋画廊で展示を行い、大方の好評をいただいた。
 しかし、会場や期間の都合で、徒然草に興味を持ちながらご覧いただけなかった方々も少なからずおられるのではないかと思われる。そこで今回は、本文(目録No.1〜21)と注釈書(目録No.22〜41)にそれぞれ資料を追加し、同じテーマで展示を開催することにした。
 国文学者である池田亀鑑博士が収集に努められた国文学関係資料の桃園文庫は、約7000点にも及ぶ膨大なものである。その中の一部である徒然草の資料群には、主要な本文と注釈書の殆どが収集されており、徒然草を研究するうえでの重要なコレクションとなっている。
 今回の展示を通して、日本中世の文学や世相といったものを少しでも感じていただければ幸いである。
 

 

−本 文−

1.徒然草
     写本 2巻2冊

   袋綴。打委模様の組表紙。内題・外題共なし。上下巻頭に「青谿書屋」
  の印があり、付箋に「天文写本」とある。本文は半葉に10行書写、墨
  付上巻79枚、下巻72枚。各章段には朱の丸印、引用和歌には朱の合
  点が付されている。

2.つれつれ草
     写本 2巻2冊

   袋綴。題簽中央に「つれつれ草上(下)」とある。上下巻頭に「青谿
  書屋」の印がある。本文は半葉に10行書写、墨付上巻55枚、下巻5
  0枚。本書は「藍表紙本」と称されている伝本。

3.つれつれ草
     写本 2巻2冊

   袋綴。表紙は藍地に金泥による橋文様、裏表紙は同様の満月文様。表
  紙左肩の題簽に「つれつれ草上(下)」とある。本文は半葉に9行書写、
  墨付上巻94枚、下巻102枚。各章段に朱の合点と朱の句読点が付さ
  れている。

4.徒然草
     写本 2巻2冊

   袋綴。布表紙見返金銀切箔散らし。下巻中央の題簽に「徒然草下」と
  ある。本文は半葉に9行書写、墨付上巻80枚、下巻66枚。各章段に
  朱の合点が付されている。上下巻に「青谿書屋」の印がある。

5.つれつれ草
     写本 2巻2冊

   胡蝶装。紺色紙表紙。左肩の題簽に「つれつれ草上(下)」とある。
  本文は半葉に8行書写、墨付上巻122枚、下巻99枚。各章段に朱の
  合点が付されている。「英王堂旧蔵本」の付箋がある。

6.つれつれ草
     写本 2巻2冊

   胡蝶装。紺色紙表紙。左肩の題簽に「つれつれ草上(下)」とある。
  本文は半葉に8行書写、墨付上巻119枚、下巻86枚。下巻の奥に
  「此つれつれ草幸隆みつから筆をそめて所持す(中略)文禄五のとし後
  の文月七日にこれを記す 幽齋叟玄旨在判」とある。

7.つれつれ草
     写本 2巻2冊

   袋綴。藍色紙表紙。中央題簽に「つれつれ革上(下)」とある。本文
  は半葉に11行書写、墨付上巻66枚。下巻63枚。上下巻頭に「青谿
  書屋」の印がある。各章段には墨の合点、文中に朱の句読点が付されて
  いる。

8.つれつれ草
     写本 2巻1冊

   胡蝶装。表紙は雨文様で見返は金泥布目紙。左肩の題簽に「つれつれ
  草 遠州公筆」とある。上下巻を一冊にまとめている。本文は主に半葉
  に12行書写、墨付142枚。

9.徒然草
     写本 2巻2冊

    胡蝶装。鼠色表紙。内題・外題共なし。五色紙に本文一面10行書写。
   墨付上巻88枚、下巻76枚。本文はほぼ烏丸本系。

10.つれつれ草
     刊本 2巻2冊

    本文は半葉に10行、片仮名によるふり仮名や句読点がつけられてい
   る。刊記に「杉田良庵玄與開板」とあるだけで年号はない。嵯峨本を覆
   刻したもので、整版として印刷された徒然革のうち最古のものである。
    刊紀「杉田良庵玄與開板」

11.つれつれ草
     刊本 2巻2冊

    本文は半葉に12行、ふり仮名、句読点がつけられている。章段ごと
   に行替をし段数を記している。上下左右に罫を引き、その枠内に本文を
   組み、また袋綴された折目に書名や丁数を印刷するといった、古活字か
   ら整版にかわってまもない時期の刊本で、その特色がよく発揮されてい
   る善本である。
    刊記「正保二年(1645)開板」

12.徒然草
     刊本 2巻2冊

    本文は半葉に13行、句読点がつけられ、若干の漢字にはふり仮名が
   つけられている。章段の別は行替をせずに、段数を□の中に白ヌキで記
   している。
    刊記「万治弐年(1659)己亥七月吉辰 高橋清兵衛 板行」

13.大字絵入 つれつれ草
     刊本 2巻2冊 絵入

    本文は半葉に14行、句読点、濁点、漢字にはふり仮名がつけられて
   いる。章段ごとに行替をし、枠付で段数を記している。上巻に10面、
   下巻に10面の挿絵がある。
    刊記「寛文拾(1670)庚戌歳三月吉祥日 山本九左衛門」

14.改正頭書 つれつれ草絵抄
     刊本 2巻2冊 絵入

    本文は半葉に12行、句読点、濁点、ふり仮名がつけられている。章
   段ごとに行替をし、枠付で小さく段数を記している。草田斎三径の書い
   た挿絵が上四分の一の部分に、下四分の三の部分に本文が印刷されてい
   る。
    刊記「元禄四年(1691)辛未初春日 書林 京都三条通升屋町
   林和泉椽板」

15.新板大字 つれつれ草繪抄
     刊本 2巻2冊 絵入

    袋綴。紙表紙。
    刊記「元禄四年(1691)辛未初春日 書林」

16.新板改正 つれつれ草
     刊本 2巻2冊 絵入

    袋綴。紙表紙。
    刊記「嘉永三年(1850)補刻」「明治十六年(1883)五月求
   版 東京書林 須原屋茂兵衛」他

17.つれつれ草
     刊本 2巻2冊 絵入

    本文は半葉に12行、句読点、ふり仮名がつけられている。章段ごと
   に行替をし、枠付で段数を記している。上巻に10面、下巻に8面の挿
   絵がある。
    刊記「元文二年(1737)丁巳弥生吉日京寺町通松原下ル町 書林
   菊屋喜兵衛版」

18.新版絵入 つれつれ草
     刊本 2巻2冊 絵入

    本文は半葉に14行、句読点、ふり仮名がつけられている。章段ごと
   に行替をし、枠付で段数を記している。また挿絵が上下2段組で挿入さ
   れている。
    刊記「元文5年(1740)申正月吉日 書林鼎直堂版」

19.つれつれ草
     刊本 2巻2冊 絵入

    本文は半葉に16行、句読点、ふり仮名がつけられている。章段ごと
   に行替をし、枠付で段数を記している。巻末に記されているように本書
   は廷享5年(1748)に旧版の版本を買い求め印刷されたものである。
    巻末「右つれつれ草板行元本校考全畢尤可為証本者也 延享五歳辰是
   夏吉日求之」

20.大字新版 つれつれ草
     刊本 2巻2冊 絵入

    本文は半葉に14行、元文5年刊鼎直堂板本(展示資料18)を復刻
   したもので、句読点、ふり仮名、章段数も元文5年刊本と同一である。
   挿絵はほとんど同じ構成だが多少変えてある。
    刊記「寛延四年(1751)未六月下旬 京都書林 加賀屋清左衛門」
   他

21.徒然草
     刊本 2巻2冊

    本文は半葉に10行。屋代弘賢が校訂し、坂下を書いて刊行したもの
   で、続郡書類従の第954として入れる予定であったものである。
    巻末「文化十二年(1815)二月二日 書写終功 源弘賢」
 


−注釈書−
              
22.徒然草[寿命院 (じゅみょういん)]抄
     写本 2巻2冊
     寿命院立安(秦宗巴)著 慶長6年(1601)頃

    各段の大意を述べ、重要な語句を抜き出し簡潔な注釈を施している。
   徒然草の注釈として最初のものであり、後の同類書に大きな影響を与え
   た。著者は豊臣秀次、徳川家康の侍医であった。
    奥書「此抄者寿命院立安法印(中略)慶長第六辛丑孟冬初九也足叟素
   然」

23.野槌(のづち)
     刊本 14巻13冊
     林羅山著 元和7年(1621)

    儒学者の立場から注釈を施している。文法・出典を考察し、兼好の思
   想に同感、強調している。徒然草注釈の基石をなしたと評価されている。
   著者は儒学者であり徳川正学の基を築いた。
         
24.徒然草抄[鉄槌(てっつい)]
     刊本 4巻4冊
     青木宗胡著 慶安元年(1648)

    「寿命院抄」や「野槌」を踏襲し、注が頭注形式に整理され、分量も
   手頃で初学者にも読みやすかったため、広く普及した。

25.徒然草古今大意
     刊本 2巻1冊
     大和田九左衛門著 万治元年(1658)

    「寿命院抄」「野槌」「なぐさみ草」の三家の評を併記したもの
   で、初学者向けの入門書である。
    刊記「万治元戊戌年 極月中旬 大和田九左衛門板行」

26.金槌(きんつい)
     刊本 12巻12冊
     西道智著 万治元年(1658)

    「寿命院抄」「野槌」「なぐさみ草」を主に踏襲し、自分の説を所々
   つけ加えた注釈書。著者は、有職にくわしい京都の医者で、保元物語大
   全、平治物語大全、平家物語大全という著作もある。
    刊記「于時万治元戊戌歳初秋上旬」
                
27.徒然草抄[盤斎抄(ばんさいしょう)]
     刊本 13巻6冊
     加藤盤斎著 寛文元年(1661)

    「盤斎抄」ともよばれる徒然草の注釈書で、多く「野槌」の説に従っ
   ているが、羅山の儒者的な解釈に対して、仏教教理による注釈書として
   注目されている。著者は歌学を細川幽斎に、俳諧連歌を松永貞徳に学び
   注釈学にカを注いだ。
    刊記「寛文元年辛丑霜月吉日 飯田忠兵衛開板」

28.徒然草句解(くげ)
     刊本 7巻3冊
     高階楊順著 寛文元年(1661)

    「野槌」「慰草」を基本に自説を加えている。注釈は本文の行間に2
   行細字で入れており、簡単明瞭という点で好まれた一書である。
    刊記「寛文五(1665)乙巳年孟秋吉祥日風月庄左衛門開板」

29.徒然草文段抄(もんだんしょう)
     刊本 7巻7冊
     北村季吟著 寛文7年(1667)
    
    師匠である松永貞徳の説に自説を加えている。数多い徒然草の注釈書
   の中で、本格的な注釈書として最もよく読まれた一書である。著者は源
   氏物語、大和物語、伊勢物語など古典文学作品の注釈学にカを注いだ国
   文学者である。
    刊記「寛文七年十二月吉日 板行」

30.徒然草諺解(げんかい)
     刊本 5巻5冊
     南部宗寿著 寛文9年(1669)

    重要な古注を上段に、下段に本文を配して対応させている。注釈の項
   目見出しは万葉仮名、注釈文は片仮名と区別している。著者は山城の人
   で儒学者。
    刊記「廷宝五(1677)丁巳年九月吉辰 中村七兵衛板行」

31.徒然草抄増補
     刊本 6巻6冊
     山岡元隣著 寛文9年(1669)
    
    袋綴。大版。藍紙装。題簽左方に「増補鉄槌上之一(上之二、上之三、
   下之一、下之二)」とある。
    刊記「貞享二乙丑暦二月吉旦 洛陽錦小路 永田長兵衛開板」
      
32.徒然草大全(たいぜん)
     刊本 12巻12冊
     高田宗賢編 延宝5年(1677)
   
    「寿命院抄」、「野槌」、「貞徳抄」などを大成した注釈書。
    刊記「延宝五年丁巳九月吉日」
      
33.徒然草参考(さんこう)
     刊本 8巻8冊
     恵空著 廷宝5年(1677)

    紀州浄福寺の僧恵空が延宝2年4月8日から、仏道修行のいとまに徒
   然草を講談したのを門弟が記録したもの。仏教的に解釈している点が他
   の諸本と異なる特色である。
    刊記「延宝六年戊午初冬吉辰 出水通日暮行当 板木屋九兵衛板行」

34.徒然草直解(じきげ)
     刊本 10巻5冊
     岡西惟中著 貞享3年(1686)

    章句ごとに注釈をし、傍注を入れ引用文等を頭注にしている。巻末に
   徒然草にでている人物の略伝や器物の図がのせられている。著者は談林
   風の俳諧を宗因に学ぶ俳人で医師でもあった。
    刊記「貞享三丙寅暦初秋吉旦 大阪心斎橋筋 書林平兵衛刊行」

35.徒然草摘議(てきぎ)
     刊本 3巻3冊
     藤井懶斎著 貞享5年(1688)

    袋綴。大版。布目入薄朽葉色の紙装。題簽は子持枠付で、左方に「徒
   然草摘議上(中、下)」とある。内題は題簽と同様に記している。
    刊記「貞享五戊辰暦二月吉旦 堀川通六角下ル西坪町 栗山伊右衛門
   板行」
            
36.徒然草諸抄大成(しょしょうたいせい)
     刊本 20巻10冊
     浅香山井著 貞享5年(1688)

    諸抄大成という書名が示すように、「寿命院抄」以下13種を数える
   注釈書の諸説を集大成し、併せて自説を加えたもの。著者は金沢藩士で
   前田綱紀に仕え国史・国文・神道に通じていた。
    刊記「貞享五戊辰五月吉日板行 京書肆 武村新兵衛」他

37.徒然草
     刊本 5巻5冊 絵入
     三木隠人注 元禄3年(1690)

    袋綴。紙表紙。「高瀬氏蔵書記」印あり。
    刊記「元禄三庚午年五月吉日 洛下二條京極 寺田與平次梓行」

38.徒然草集説(しゅうせつ)
     刊本 15巻7冊
     閉寿著 元禄14年(1701)

    「徒然草諸抄大成」がとりあげた13種の注釈書の他に金槌抄、直解
   など6種をとりあげている。徒然草諸抄大成の羅列主義均な方針と異な
   り精選して集成している。
    刊記「元禄十四辛巳年十一月吉日 皇都書林 吉田四郎右衛門」他

39.女訓徒然草
     刊本 7巻7冊 絵入
     宍戸光風女紫著 元禄15年(1702)

    袋綴。紙表紙。題簽左方に「新版絵入女訓つれつれ草」とある。「徒
   然草女訓(宝永六目録)」ともいう。
    刊記「元禄十五壬午歳仲龝吉旦 岩田屋半七刊」

40.つれつれの讃(さん)
     刊本 8巻5冊
     各務支考著 宝永8年(1711)

    著者は蕉門十哲の一人で、俳諧連歌の付合の立場からの注釈が主体を
   なしている。
    刊記「書林 京都寺町押小路上ル町 柏屋勘右衛門開板」他
     
41.徒然要草(かなめぐさ)
     刊本 7巻7冊
     厭求著 天明3年(1783)

    徒然草のうちから88の章段を抽出して解釈したもので、仏教的で説
   法的傾向の強いものである。序には浄土宗の僧である著者が100年ほ
   ど前に伊勢の豊原天王山で著したものを、僧潮音が刊行したと記されて
   おり、著作年代からいえば、大全、参考の次にくるべきものである。
    刊記「天明三年癸卯春三月吉旦 弘所書林 江戸日本橋南一丁目
   須原茂兵衛」他


 

 

 

 

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