第32回 2000.11 和紙再発見 −Japanese Paper−

展示にあたって

今世紀最後の展示会のテーマは和紙。和紙が日本で作られるようになってから約千四百年の間、和紙は自然の材料をそのままに使い作られてきました。その千年以上の歴史の中で今世紀は和紙にとって衰退の世紀だったといえます。

 明治以来、紙の需要の高まりと日本への西洋技術の流入により、千年以上もの間日本のくらしのあらゆる場面を支えてきた和紙は機械生産の洋紙にその場を取って代わられることとなります。木材パルプ原料の洋紙は質では和紙に劣るものの、大量生産が可能でした。しかし、その生産の過程でおこる森林の伐採や、化学薬品の使用による環境への影響など、我々の前に様々な弊害が現れることとなりました。また、そのようにして作られる洋紙のなかには、月日がたつと紙が酸性化し、変色してぼろぼろになってしまうものもあることも分かってきました。それに比べて、和紙は正倉院の宝物の紙をみれば分かるように、保存方法によっては千年以上の間変わらず存在しつづけるのです。

 今世紀の終わりを迎え人々は自然のぬくもりをもつ和紙の良さに再び目をむけるようになってきました。これは和紙だけに限ったことではありません。我々は利便性を追求するあまりに、自然との調和した生活を失ったことに気づきつつあるのです。千年以上の歴史の中で、和紙にとって激動の百年となった今世紀、その終わりに和紙の歴史を振り返り、和紙を知ることによって我々が失ったものを考えなおす機会になればと思います。

    

―和紙 製作過程の関係文献―

一、   楮及楮紙考 王子製紙株式会社編
      東京 王子製紙 一九四〇年刊 一三〇頁 二三糎

二、  紙漉大概 木崎盛標[] 
      京都 光彩社 一九七七年刊 二冊 二七糎

三、  和紙 後藤清吉郎著
     東京 ギャラリー吾八 一九七五年刊 一冊(丁付なし) 二六糎

四、  紙漉重宝記 国東治兵衛撰
     大阪 製紙印刷研鑚会 一九二五年刊 二〇丁 二三糎

五、  彩画職人部類 橘岷江画
     京都 臨川書店 一九八〇年刊 二冊 二七糎

六、  庭訓往来 安政七年(一八六〇)刊 再刻 一冊
     須原屋茂兵衛 二六糎

七、  自遣往来 元治二年(一八六五)刊 一冊
     藤原秀賀注釈 玉蘭斎貞秀図 勝村治右衛門 二六糎

八、  職人尽歌合 延享元年(一七四四)刊 三冊
     伝東坊城和長書 土佐光信画 皇都書林 二三糎

九、  今様職人尽歌合 文政八年(一八二五)刊 二冊
     北尾正美画 上巻 銕廼屋大門撰 下巻 五柳園一人撰 新泉園 二四糎

十、  七十一番職人歌合 [江戸後期写] 三軸
     
[書写者不明] 三〇糎

 

―時代を超え生き続ける和紙―

十一、 百万塔陀羅尼 宝亀元年(七七〇)刊
     楮紙 五・九×四二・三糎 三十一行 塔の高さ 二〇・三糎

十二、 古今和紙譜 関義城著
     一九五四年刊 二冊 二七糎(奈良時代のサンプルを展示)

十三、 摺仏(二重連弁阿弥陀仏座像) 平安末期刊 二枚
     楮紙 四五×二八糎

十四、 成唯識論 第七巻 文永頃(一二七〇年頃)刊 春日版 一冊
     折本 楮紙 二二・八糎

十五、 大般若波羅蜜多経 第四七五巻 応永十七年(一四一〇)刊 春日版 一冊
     折本 楮紙 二五・九糎 

十六、 源氏物語系図 鎌倉初期写 一軸
     巻子本 楮紙 二八・六×六米八二糎 

十七、 源氏物語系図 鎌倉初期写 一軸
     伝越部禅尼筆 巻子本 楮紙 二九・九×七米二・五糎 

十八、 源氏物語系図 正嘉二年(一二五八)写 一軸
     巻子本 雁皮紙 三一×十二米八一糎 

十九、 莵玖波集 南北朝期写 巻一四 一軸
     伝素眠法師筆 雁皮紙 二四・四×五米四・四糎

二十、 源氏物語 ゆめのうきはし 室町初期写 一冊
     紫式部著 胡蝶装 雁皮紙 一八×一六・五糎

二十一、伊勢物語 室町中期写 一冊
     胡蝶装 楮紙 二〇・八×一五・六糎

二十二、古今和歌集 室町中期写 一帖
     折本 楮紙 二五・九×二二糎

二十三、伊勢物語 室町末期写 一冊
     胡蝶装 雁皮紙 二二・三×一五・八糎 

二十四、伊勢物語 室町末期写 一冊
     胡蝶装 雁皮紙 二一・二×一六・八糎 

二十五、伊勢物語聞書[肖聞抄] 室町末期写 一冊
     
宗祇講 牡丹花肖柏聞書 袋綴 鳥の子紙 二一・五×一五・三糎

二十六、源氏物語 室町末期写 五四巻二三冊
     紫式部著 袋綴 楮紙 二六・九×二〇糎

二十七、源氏物語 室町末期写 五四巻二九冊
     紫式部著 袋綴 楮紙 二二・七×一五・九糎

二十八、光源氏物語系図 室町期写 二巻二軸
     伝清水谷実秋筆 巻子本 雁皮紙 紙高三〇糎

二十九、古今紙漉紙屋図絵 関義城著
     東京 関義城 一九六五年刊 二冊 二七糎(室町・安土桃山時代のサンプルを展示)

三十、 貞観政要 慶長五年(一六〇〇)刊 古活字本(伏見版) 一〇巻八冊
     袋綴 楮紙 三〇・六×二〇・六糎

三十一、伊勢物語 慶長一三年(一六〇八)刊 古活字本(光悦本) 二冊
     袋綴 雁皮紙 二六・八×一九糎

三十二、源氏小鏡 元和中頃(一六一〇年代)刊 古活字本 三巻三冊
     袋綴 楮紙 一八・八×二七・九糎

三十三、庭訓往来 元和五年(一六一九)刊 一冊
     袋綴 楮紙 二八×一六・三糎

三十四、順礼物語 寛永一九年(一六四二)刊 三巻三冊
     三五庵木算(三浦浄心)著 袋綴 楮紙 二八×一九・九糎

三十五、むさしあぶみ 万治四年(一六六一)刊 二巻二冊
     浅井了意著 袋綴 楮紙 二五・九×一八・一糎

三十六、名所都鳥 元禄三年(一六九〇)刊 六巻八冊
     袋綴 楮紙 二二・五×一六・五糎

 

―現代の各地手漉き和紙―

三十七、昭和民芸紙譜 久米康生著
     京都 思文閣出版 一九七七年刊 五冊 二七糎

三十八、手漉和紙 毎日新聞社手漉和紙大鑑編集委員会編
     東京 毎日新聞社 一九七五年刊 三冊 三八糎

三十九、細川紙誌 細川紙技術者協会編
     東京 雄松堂書店 一九八〇年刊 六四頁 二九糎

四十、 越前和紙今昔絵図 小林忠蔵調査
     大阪 柳瀬商店内和紙クラブ 一九六九年刊 一冊(丁付なし) 二七糎   

四十一、越前奉書伊予奉書檀紙考 柳瀬四郎編
     京都 思文閣出版 一九六九年刊 一冊(丁付なし) 二八糎

四十二、近江鳥ノ子 滋賀県無形文化財雁皮紙 高橋正隆著
     京都 文華堂 一九七一年刊 九三頁 はり込み図三二枚 二六糎

四十三、紙すき村黒谷 中村元・記・編集
     黒谷町(京都)黒谷和紙組合 一九七〇年刊 一二九頁(図共)
     見本紙一〇二枚 三〇糎

四十四、高野紙 中川善教著
     京都 便利堂 一九四一年刊 四六頁 図一〇四枚 二三糎

四十五、滅亡高野紙見聞図説 柳瀬四郎調査 山林文子絵 木村考徳図
     大阪 柳瀬商店内和紙クラブ 一九六九年刊 一冊(丁付なし) 二八糎

四十六、手漉和紙精髄 ふるさとと歴史 久米康生著
     東京 講談社 一九七五年刊 三四五頁 三五糎

四十七、古紙之鑑 関義城編著
     東京 木耳社 一九七七年刊 二冊 三七糎

四十八、出雲和紙鑑 安部栄四郎著
     東京 木耳社 一九七四年刊 一〇〇頁 三九糎

四十九、紙漉村旅日記 寿岳文章、寿岳静子著
     東京 明治書房 一九四四年刊 四九二頁 二二糎

五十、 紙漉村旅日記 寿岳文章、寿岳静子著
     向日町(京都) 寿岳文章 一九四三年刊 二七八頁 三三糎

五十一、生漉紙 手漉和紙大鑑 第一巻 毎日新聞社手漉和紙大鑑委員会編
     東京 毎日新聞社 一九七四年刊 和紙見本二〇〇枚 五五糎

 

参考図書

・手漉き和紙 東京 東京連合印刷出版部 一九八三年刊 一冊(頁付なし) 二八糎
・おもしろい紙のはなし 小宮英俊著 東京 日刊工業新聞社 一九九〇年刊 二一三頁 一九糎
・和紙の道しるべ その歴史と化学 町田誠之著 京都 淡交社 二〇〇〇年刊 二九八頁 二二糎
・和紙文化史年表 前川新一著 京都 思文閣出版 一九九八年刊 三四九頁 二二糎
・古今紙漉図集 関義城著 東京 関義城 一九五九年刊 二五八頁 二二糎
・和紙要録 竹田悦堂著 東京 文海堂 一九六六年刊 二〇〇頁 二二糎
・和紙百話 春名好重著 京都 淡交社 一九七七年刊 二八六頁 二二糎

展示の部屋へ戻る