第四回 1982年11月 源氏物語系図展

 

展示にあたって

         源氏物語系図について

 源氏物語には古来より「系図」というものが伝えられている。この源氏物語系図は、源氏物語五十四帖の各巻に登場する人物を皇統、家系によって整理し系統化し、それぞれに簡単な説明を加え、図式化したものである。
 源氏物語は四代七十五年という長年月にわたり約五百人の人物が登場する長編物語であり、それらの人物の姓名は、ほとんどが実名でよばれず、官位名か象徴的な呼名を使用するのが通例である。しかも官職名は重複したり、同一人物でも昇進によって変化するのである。従って、源氏物語の読者や研究者が五十四帖の内容を正確に理解するためには、各巻の事件や複雑な人物構成を総体的、系統的に整理しておくことが必要になってくる。このような要求のもとに作られてきたのが源氏物語系図であった。
 源氏物語系図はすでに鎌倉初期までには著作されたと考えられる。その後、三条西実隆が長享二年(一四八八)に、先行の系図を統一補正して完本たるベき系図を著した。今日、この実隆本以前のものを特に源氏物語古系図と称しているが、これは池田亀鑑博士の命名に由来するものである。
 十一世紀初頭に紫式部によって書かれた源氏物語は、成立直後から人口に膾炙したが、今日では作者自筆の草稿本はもとよりのこと、平安時代に書写された写本もすべて消滅してしまい、現存する源光行、親行父子校訂による河内本や藤原定家の青表紙本などの鎌倉初期に成るものを残しているにすぎない。一方系図は、今回ここに展示した九條家旧蔵本源氏物語古系図が現存する最古のものとして鎌倉初期を下らない時期の成立と考えられているのを始めとして、この頃までに書写されたものがいくつか存しているのである。即ち、現存の源氏物語以前の本文に基づいて作成された古系図が保存されていたことになるのである。この古系図には、現在の源氏物語には登場しない人物やそれに関係する記述を載せたものもあり、これらを種々の角度から検討することによって、源氏物語本文の系統や、その時代における巻数、巻序、内容などの状態を推察することができることで源氏物語研究史上重要な資料となっているのである。

昭和五十七年十一月

 

一 正嘉本源氏物語系図

 

室町期写 一軸
巻子本 紙表紙 鳥の子紙 31×1281cm 一紙50cm 朱雀院を欠く
源氏物語古系図

奥書「書写本称 此本以六条三品禅門自書本写之即以嵯峨禅尼俊成女秘本校之重以或
卿相本京極入道中納言家本比校之其後所々証本大体数十巻見合加遺漏直訛謬剰一部披覧之次
潤色旁足秘蔵努勿許外見和歌作者以朱合点了」
「正嘉二年夏以右証本終書功此後猶以家々証本更遂度々比校取捨潤色斯内或貴所御本
京極黄門躰之所書進不慮申出同冬比重見合之件御本雖略本有被注付之旨以所々相違文字之誤等直
付之畢旁足指南莫出困非譜系之人被付朱点彼御本被注之人給也」
「校合御本奥書 家々の本さまさまに候これを秘本とすへしと存知候あなかしこ御帳
のほかへいたされ候ましく候」


 

二 光源氏物語系図

 

室町期写 二巻二軸
伝清水谷実秋筆、巻子本 布表紙 (七宝繋ぎ地に鳥の文様) 見返金泥布目紙 鳥の
子紙 上巻 30.5×1167cm 下巻 30.5×963cm 一紙48.5cm 上巻 太上天皇−雲林院律師
下巻 大臣−六条御息所−妙法寺の別当まで
源氏物語古系図



 

三 源氏系図

 

写本 一冊
折本 紙表紙 (花菱七宝文) 雁皮紙 17×11.5cm 六行 五十九丁
長享本系統 (増補以前のものか)



 

四 九條家本源氏系図

 

鎌倉初期写 一軸
巻子本 紙表紙 楮紙 (裏打) 28.6×682cm 一紙45.2 「九條」印 巻頭、巻尾を欠く
裏書きあり

(池田亀鑑博士によれば鎌倉初期の写本で日本最古の源氏古系図という)


 

五 源氏物語系図残闕

 

鎌倉初期写 一軸
伝越部禅尼筆 巻子本 布表紙 (二重蔓牡丹唐草文様金欄) 楮紙 29.9×72.5cm 一紙45
cm 「文草蔵書」印 首尾を欠く
源氏物語古系図



 

六 源氏物語系図

 

写本 一冊
袋綴 紙表紙 (紺色) 鳥の子紙 30×21.7cm 十六行 二十四丁 題簽左肩 「黒川
真頼」 「黒川真道蔵書」印
源氏物語古系図



 

七 源氏物語系図

 

写本 ニ巻二冊
袋綴 紙表紙 (しぶ茶色) 楮紙 27.6×20cm 十二行 題簽左肩 (上は欠落)
「古系図 大島本」



 

八 源氏系図

写本 一冊
袋綴 紙表紙 (紗綾形の文様) 楮紙 27.2×21cm 十三行 三十五丁 題簽中央 朱
墨書入あり
源氏物語古系図



 

九 けんしのけいつ

 

寛政十年写 一冊
袋綴 紙表紙 (茶色) 楮紙 25.9×18.3cm 九行 四十六丁 題簽左肩 「篁国文庫」 印
附 むらさきしきふのけいつ
文章化した源氏系図
源氏物語古系図



 

一〇 源氏物語系図

 

慶長十四年写 一冊
吉田梵舜筆 袋綴 紙表紙 (くちば色) 楮紙 26.3×20.5cm 十三行 四十一丁 題簽
左肩
実隆系統の系図にあらず



 

一一 源氏物語系図

 

写本 一冊
袋綴 紙表紙 (茶色) 鳥の子紙 27.1×20cm 十行 三十八丁 題簽中央 「阿波国
文庫」 「不忍文庫」印



 

一二 源氏系図

 

永禄七年写 一冊
三条西実隆著 袋綴 紙表紙 (媚茶色) 前半楮紙、後半鳥の子紙か 28.7×21.2cm
十行 四十七丁 題簽左肩



 

一三 光源氏物語系図

 

天正二十年写 一冊
三条西実隆著 水無瀬兼成筆 折本 紙表紙 (こうろぜん色) 雁皮紙 16.5×16.8cm
十一行 二十七丁 外題中央
長享本



 

一四 源氏物語系図

 

延宝六年写 一冊
三条西実隆著 胡蝶装 紙表紙 (はなだ色) 雁皮紙 24.8×18.4cm 十二行 三十一丁
題簽中央
長享本



 

一五 源氏物語系図

 

安永四年写 一冊
三条西実隆著 袋綴 紙表紙 (仮製本) 楮紙 26.5×20cm 十八行 十三丁 外題中央
天文本



 

一六 源氏物語系図

 

写本 一冊
三条西実隆著 折本 布表紙 (小花丸文) 見返銀切箔散らし 雁皮紙 24.8×17.2cm
十行 二十六丁 題簽左肩



 

一七 源氏之系図

 

写本 一冊
三条西実隆著 胡蝶装 紙表紙 (紺色) 見返金銀切箔散らしにススキの絵 雁皮紙
18×25.7cm (横長本) 十二行 四十丁 題簽左肩
長享本



 

一八 源氏系図

 

写本 一冊
三条西実隆著 袋綴 紙表紙 (牡丹文様) 鳥の子紙 26.4×20.1cm 十一行 三十九丁
題簽左肩
長享本



 

一九 源氏系図併不載系図人々

 

写本 一冊
三条西実隆著 袋綴 紙表紙 (草色) 楮紙 23×16.7cm 十一行 四十二丁 題簽中央
附 伊勢物語系図
長享本



 

二〇 源氏物語系図

 

写本 一冊
三条西実隆著 折本 布表紙 (亀甲繋ぎ地花文) 雁皮紙 21.3×16cm 十行 二十四
丁 題簽左肩 (但し欠落)
長享本



 

二一 源氏物語系図

 

写本 一冊
三条西実隆著 折本 紙表紙 (はなだ色) 雁皮紙 17.6×19cm 十一行 二十三丁
題簽中央
長享本



 

二二 光源氏系図 

 

写本 一冊
三条西実隆著 胡蝶装 紙表紙 青、黄、赤の三色の鳥の子紙 22×17cm 十行
四十五丁 題簽左肩
長享本



 

二三 源氏物語系図

 

写本 一冊
三条西実隆著 袋綴 紙表紙 (はなだ色) 楮紙 27.1×18.8cm 十二行 三十二丁
題簽左肩
長享本



 

二四 源氏物語系図

 

天文十九年刊 一冊
袋綴 紙表紙 (濃紺色) 楮紙 27.3×19.3cm 四周単辺 十二行 四十六丁 題簽中央
板心に「系」及び丁数



 

二五 源氏物語系図 (補訂)

 

文政三年刊 一枚
紙表紙 (はなだ色) 楮紙 20.2×9.8cm 四周単辺 一折 題簽中央「上田文庫」
「草薙神主蔵書」印



 

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