一定の行為が犯罪とされ、一定の刑罰が科されるべきことは、刑法が定める。しかし、社会において現実に発生した犯罪に刑法を適用し、犯人に特定の刑罰を科すためには、一連の手続を必要とする。「捜査→公訴→第一審の公判・裁判→上訴審の裁判〔確定〕→刑の執行(→非常救済手続)」と続くこの一連の手続を刑事手続という。この刑事手続を規律する法律が、刑事訴訟法である。
個人間の私的な紛争の解決が求められている民事訴訟とは異なり、国家対個人の関係において、個人に対するさまざまな人権の制限を伴いつつ、国家刑罰権の実現をめざす刑事手続においては、個人の人権保障への配慮が必要不可欠である。しかし、犯罪が行われた以上必ず犯人を逮捕し処罰しなければならないという要求が強いために、刑事手続を担う国家機関は、とかく個人の人権保障に対する配慮を欠きがちになる。だからこそ、法律によって、そうした国家機関の行動を規制する必要があり、憲法31条を受けて、刑事訴訟法がその役割を担っているのである。
この講義では、「刑事訴訟法1」および「刑事訴訟法2」の講義において得た基本的知識を前提として、捜査・公訴・公判・証拠・裁判・救済手続それぞれにおける重要論点や最近の重要判例などにつき、判例および実務と諸学説の対立とを明らかにすることにより、刑事訴訟法全般にわたる詳細な解釈論的問題について解説する。
したがって、刑事訴訟法全般にわたる広範かつ発展的な知識を身につけてもらうこと、その知識を活用して具体的な事案を分析・検討する能力を身につけてもらうこと、さらに、その分析・検討を適切に文章化する能力を身につけてもらうことを、授業の目標とする。
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